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声明 ―九州電力の電気料金引き下げ発表について。グリーンコープでんきの電気料金について。―

2019年4月15日

一般社団法人グリーンコープ共同体
第1期第7回理事会
グリーンコープ生活協同組合連合会
第26期第11回理事会

 本年2月20日に九州電力が電気料金の引き下げ方針を発表しました。来(2020)年4月に電力全面自由化の社会を迎えようとしており、電気料金が自由な競争にもとづいて引き下げられていくのは歓迎すべきことです。発表でも、これによって新電力事業者との競争に向かう旨が述べられています。

一.しかし、私たちは次のような問題を思いに抱き、疑問を感じずにはいられません。

(一) 原発に要する諸費用や原発事故への対処や廃炉費用は、原発をつかって事業を営んできた大手電力(原発事業者)が負担すべきものなのに、それが「託送料金」の仕組みを用いて新電力事業者とその利用者に付回しされ、さらに上乗せもされようとしています。
  (1) 発表によれば、引き下げの理由として「原発4基が再稼動したため」と記されています。これを聞いてほとんど誰もが「ああ、原発の電気はやっぱり安いんだ」と思ってしまいます。長い間私たちは、国や大手電力会社(原発事業者)がそのように言うのを聞かされてきました。しかし、事実は果たしてそうではなかったことが段々と明らかになっています。
  (2) とりわけ、2011年の東京電力福島第一原発事故後に浮き彫りになってきたのは、原発事故が多くの生命と暮らしを奪うにとどまらず、どれだけ多額のお金を費消し、その負担を国民にもたらすかということです。この事故の対処費用は2013年頃に約11兆円と言われていましたが、一昨年の公表では約25兆円に膨れ上がっています。さらに、今年3月7日には「きちんと試算すれば、最終的には81兆円になる。」とする研究発表(日本経済研究センター)も出ています。
  (3) この事故の賠償責任は東京電力が負うべきものですが、すでに現在沖縄電力を除く他の大手電力会社(原発事業者)がその負担金を拠出しています。中国電力と北陸電力は会社がその費用を負担していますが、他の大手電力会社(原発事業者)は電気料金として電気利用者から徴収しています。
  (4) さらに賠償費用が増加する中、今度は「託送料金(私たちが設立したグリーン・市民電力のような新電力事業者が大手電力会社に電線使用料として支払う料金)」に、2020年4月から新たに「賠償負担金」という名目の費用を上乗せすることが計画されています。
  (5) 原発廃炉に要する費用についても同じことが言えます。社会通念からいって、ある施設を用いて事業を営んだ事業者は自らの責任でその施設を廃止・解体しなければなりません。2013年までは、例えば中部電力の浜岡原発1・2号機や、事故を起こした東京電力福島第一原発も、会社の責任でその廃炉費用を賄うことになっていました。しかし、その後、国の一部で原発会計制度がいじくられることを契機に、それら以外の全国の原発の廃炉費用については、2020年4月から「託送料金」中に新たに「廃炉円滑化負担金」として上乗せすることが計画されています。
  (6) これら2つの負担金以外にも、すでに(その使途の9割が原発事業に向けられるとされる)「電源開発促進税」と「使用済燃料再処理等既発電費」という原発費用が、電線使用とは関係がないにも拘わらず「託送料金」に含められています。
  (7) 私たちは、自然エネルギーの電気をつくり、原発フリーの電気を供給する「グリーン・市民電力」を設立しています。現在、グリーン・市民電力から経済産業省と大手電力各社に対して『託送料金への賠償負担金と廃炉円滑化負担金の上乗せを止めてください。電源開発促進税や使用済燃料再処理等既発電費を含めないよう見直してください』等について、陳情と要請を余儀なくされています(グリーンコープのホームページに掲載しています。ぜひご参照ください。)。

 

(二)大手電力(原発事業者)への優遇はそれに留まりません。

  (1) 私たちは、3年前、グリーン・市民電力としてグリーンコープでんきを組合員に届ける事業を始めた時に、「託送料金」という言葉に出会いました。その中味を確かめる中で、上に挙げたことを知るにいたりました。
  (2) しかし、それに留まりません。私たちが知らず、国民みんなのお金である税金をつかって原発に使われてきた莫大な費用があることを、大手電力会社の有価証券報告書や託送料金原価内訳表等いろいろな資料から知ってきました。これについても私たちは、原発のコストが安いというのは燃料代の違いにすぎず、実際に要している費用の多くはコスト計算に含まれていないのではないかと考え、実際にはどうなのかということを経済産業省・文部科学省や大手電力会社に尋ねつづけています。(これもホームページに掲載しています。ぜひご参照ください。)
  (3) 例えば、原発廃炉によって出てくる放射性廃棄物は汚染度の低い低レベルのものでも「300~400年の検査」と「10万年の地中保管」と決められているようですが、これだけの長期間に亘るこの仕事を行う責任やそのための費用はどうなっていくのでしょうか。そのお金も全て含めて「原発のコスト」と言われる計算はされているのでしょうか。
  (4) 最近では「容量市場の創設」ということが進められると聞いています。これは、「①発電事業者は発電所を持っていたら契約金をもらえる。②原発のような出力の大きい発電所が多くもらえる。③稼動していなくても持っていたらもらえる。④そのための費用を全ての小売事業者から拠出させる。」といった内容だそうです。
  (5) その他にも、自然エネルギーをもっと進めねばならないのに、それと逆行するかのようなこともあっています。送電線の「空き容量問題」は報道されているとおり、稼動していない原発分のため、新規の自然エネルギー分が締め出されるという様子です。加えて、昨年秋以降九州電力での原発再稼動が進む中、太陽光発電所についての出力制限が指示されてきています。そうした結果、グリーン・市民電力で言えば、最大指示制限(年間30日停止)の場合、およそ年間33万kWhの電力と1,200万円の収入を失うことになります。そして、それについての補償はありません。こうしたことで、原発をもつ大手電力会社と原発に頼らない自然エネルギーを進めていく新電力事業者の間に対等な競争が担保されるのでしょうか。
  (6) そもそも、電気料金明細には原発費用が明記されない(例えば上述した「電源開発促進税」は明記のガイドラインがあるにも関わらず殆ど実施されていない)一方で、「再生エネルギー賦課金」は明記され、あたかもその負担が大きいかのようなイメージだけが喧伝されているようにも思います。

 

(三) このような原発事業者優遇の構造によって、大手電力(原発事業者)は本来自らが負担すべき費用を競争相手に負担させる一方で、自らの料金を引き下げているのではないでしょうか。
  (1) 原発の費用を税金から持ち出し、あるいは新電力事業者と利用者に求め、原発事故を起こしても対処費用の負担を新電力事業者と利用者に求め、原発を用いて事業を行っておきながら廃止費用の負担を新電力事業者と利用者に求める一方で、原発が再稼動して燃料代が下がったから電力料金を引き下げるというのは、片一方で市民や競争相手と利用者に自らの責任による費用を出してもらいながら、もう一方で燃料代が下がったから値下げをして競争をしていきますというような、釈然としない、矛盾を感じさせることになっています。
    <注> 卑近な喩えですが、私たちは「産直びん牛乳」を組合員に供給し、そのための工場を建設しています。工場に要する費用を市民や他事業者に負担してもらって、その上で牛乳の価格を引き下げるということはありません。今、原発を巡って、そうしたことが許されるようになっていないでしょうか。
  (2) さらに、これによって「原発は安いんだ」という事実とは異なった幻想のイメージが広まることを危惧します。
  (3) 私たちは、原発の本当のコストの情報がきちんと全貌として示され、その上で本当に原発が安いという事実があれば、それを認めようと思います。しかし、本当の情報が示されず、一部を都合よくもってきて安くなると言われるのであれば、それは絶対におかしいと言わねばなりません。今回の九州電力の引き下げ発表についても、そう考えています。
  (4) 何より、原発に要している費用に関わる誠実で正確な全情報が開示されるべきと考えます。電気を利用する人々皆がそうした情報に触れ、ありのままに議論できることが必要ではないでしょうか。そのプロセスを通して、電力自由化が進められる本来の趣旨(大手電力の地域独占を無くして、どんな電気を社会で使っていくかを様々な事業者や市民が考え、進めていけるようにする。そして真に対等な競争が行われること)が貫かれるようにしたいと思っています。そして、生命と暮らしとお金を奪う原発を無くしていきたいと思っています。

 

二.グリーンコープでんきの料金(九州電力のエリア分)を引き下げることとします。

(一) 原発に頼らない電気を目指してきたグリーンコープでんきは、昨年10月より名実ともに「原発フリー」となりました。
  (1) 原発に頼らない電気を目指し、2016年8月よりグリーンコープでんきの供給を始めました。2019年2月の利用件数は、九州電力エリア3,317件、中国電力エリア848件、関西電力エリア84件、合計で4,249件となっています。主旨に賛同する人が着実に増え、今現在このようになっています。
  (2) そうした中、事実として原発を電源とする電気の扱いが無くなっていき、加えて、昨年10月に、明確に原発フリーの電気の調達ルートが特定できた結果、名実ともに「原発フリーのグリーンコープでんき」とすることができています。
  (3) もちろん、まだ先には「自然エネルギーのみのグリーンコープでんき」「自分たちで発電したグリーンコープでんき」としていくテーマや、私たちだけでなく、他の新電力や大手電力自体でのそうした広がりから原発に頼らない電気が社会全体のものになっていけるようにするという更なるテーマはあります。そうしたテーマを含め、この運動は微弱ながらも確実に前進しています。

 

(二) そうした前進を進めていくにあたり、グリーンコープでんきの料金は、エリアにある大手電力と同じ額とするとしてきました。
  (1) 運動の主旨を共有した上で、大手電力からの切替えにあたって切替えることによる家計の負担を増やさせないという考えに基づいて、グリーンコープでんきの料金はエリア内の大手電力会社と同じ額と定めてきました。
  (2) ただし、これは規制料金下にある従量電灯B及びCの契約に関してのものです。オール電化家庭でのプラン設計を大手電力等と同じように組めるのははまだ私たちの力の及ぶところとなれていません。「オール電化家庭のグリーンコープでんき」というテーマももちろんあります。

 

(三) 今般、九州電力の電気料金引き下げという状況が生まれ、そのことについての私たちの考えは前述のとおりです。そのうえで、上記の考えに基づき、グリーンコープでんきの九州電力管内の電気料金について値下げを行います。2019年4月検針分より実施いたします。

 

 以上、声明いたします。

以上

2019年4月19日

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