【基礎編】家計改善支援の基本を
理解しよう

この【基礎編】では、動画の視聴を通して、家計改善支援の全体像を理解することができます。ダウンロードできる手引書と併せて映像をご覧ください。また、具体的な帳票の作成法を学ぶ場合は、【実務編】をご覧ください。

はじめに

本ページの【基礎編】における映像と手引書は、家計改善支援の基礎を学んでいただくためのユニバーサルな教材として平成 30 年度に作成したものです。以下の手引書をダウンロードし、閲覧しながら映像をご覧ください。

相談者とともにすすめる家計改善支援(平成30年度)

映像教材手引書:PDF

本教材は、家計改善支援に取り組むに当たって、最低限の基礎的なことを理解していただくことを想定しています。映像中の事例は、教材用に作成しているため、流れのスムーズさ等は、あくまでもモデルであることを前提に理解してください。

基礎的な支援のあり方とは別に、どのような対人支援にも言えることですが、相談者が 100 人いれば 100 通りの支援方法や解決策が必要です。相談者一人ひとりのニーズにあったオーダーメイドの支援をしていくために、より良い支援のあり方を模索する第一歩として、この教材を活用いただきたいと思います。

特に留意していただきたい点はPointとして記しています。映像の内容をさらに自分に引き寄せていただく上での参考にしてください。

家計改善支援の基本的な考え方と相談の流れ

家計改善支援の基本的な考え方と相談の流れについて

※本動画はトップページと同様の内容となります。

動画の補足事項は「手引書 P.7〜12」を参照にしてください

家計改善支援の基本的な考え方

家計改善支援とは、相談者の気持ちに寄り添いながら家計の状況を明らかにし、家計の視点から相談者とともに生活困窮の出口を見つけ出す支援です。相談の中で家計の見える化を図り、1ヶ月の収支の状況を理解してもらうことが家計改善支援の基本的な考え方です。相談者本人が家計の現状を理解し、生活を見直すことで家計の改善方針を見出して、将来にわたって収支を自己管理できるよう伴走しながら支援を行います。

家計改善支援の基本の5つの柱

家計改善支援には、支援の5つの基本的な柱があります。

  1. 家計の現状を理解してもらう支援
  2. 行政窓口に同行し、給付制度の利用や税金、公共料金等の滞納を解消する支援
  3. 法律相談に同行し、借金や家賃滞納など債務に関する支援
  4. 生活の健全化を図るために必要な貸付をあっせんする支援
  5. 相談者自身が家計を自ら管理できるようにする支援

この他、家計改善支援だけで解決できない、障がいや依存症(ギャンブル、アルコール)などの課題を抱える人への支援は、自立相談支援事業所や医療機関などと連携を行います。

家計改善支援員のこころ構え〜信頼関係を形成するために傾聴を基本とする〜

家計の現状の根本の部分にある相談者の気持ちを受けとめ、寄り添ってお話を聴くこころ構えが大切です。どのような感情が存在し、何を伝えたいか、相談者の背景を理解しながら話をすすめます。相談の核心を聞き取りながら、信頼関係を深めていきます。

そして、家計改善支援員の思い込みや価値観で相談者の話を受けとめずに、まずよい聴き手となり「聴かせていただく」こころ構えでじっくり聴く姿勢(傾聴)が必要です。自分が正しく理解できているか、相談者の主訴を発語し、間違いがないか確認します。

この他、相談者の言葉だけではなく、目や手の動き、声の調子、表情、息遣い、姿勢など全体の様子に気を配りながら理解に努めます。何気ない仕草は相談者が、どのように感じているかを知る手がかりになることがあります。

また、相談者の話を聴いて動揺したり、違和感を感じたり、思考が閉鎖的になっていないか、自分自身の気持ちに気付くことも重要です。これ以上相談者の話を聴けないと感じたら、他の家計改善支援員の助けを求める心のゆとりも大切です。


家計改善支援の基本となる家計表・キャッシュフロー表の意味と役割について

生活再生のための家計改善支援に必要な道具(ツール)として、相談時家計表、家計計画表、ライフイベント表、キャッシュフロー表を使用します。

最初の共同作業「相談時家計表」

相談時家計表は家計の収支の状況を把握するためのツールです。まずこの家計表作成という共同作業を通じ、相談者と家計改善支援員は家計の現状を理解することができます。

解決に向けた道しるべ「家計計画表」

相談時家計表をベースにした予算書として、改善要素を整理した家計計画表を完成させます。

将来を共に考える「ライフイベント表」「キャッシュフロー表」

相談者世帯全体の将来の収支の変化を予測したものがライフイベント表です。そのライフイベントを家計計画表に組み込み、2〜3 年先の将来を見通すことができるように作成されたのキャッシュフロー表となります。キャッシュフロー表は相談者の今後の暮らしの行程表となります。月々どの位の費用が必要で、家計の過不足はどの時期に発生するのかを予め相談者本人に確認してもらう役割を持ちます。

「相談時家計表」「家計計画表」「ライフイベント表」「キャッシュフロー表」作成時の留意点

「相談時家計表」「家計計画表」「ライフイベント表」「キャッシュフロー表」は、「相談者と コミュニケーションをとるための道具」です。これらの表をつくること自体が目的化し、家計改善支援員が自分の知識や理解で勝手に作成している、もしくは相談者の話をあまり聴かずに作成しているケースがあります。 手法だけが一人歩きし、相談者が置き去りにされ、相談者の思いや願いが反映されないような家計表やキャッシュフロー表には全く意味がありません。

家計改善支援の専門性とは、資格やスキルに基づくものではなく、相談者に寄り添いながら相談者の家計にフォーカスしていく姿勢を言います。

初回面談への臨み方

映像視聴の前に

この事例の田中さんは少し前に自立相談支援事業所に相談し、そこの紹介で家計改善支援事業所に相談に来られています。したがって、困っている内容については自立相談支援事業所との情報共有は出来ていることが前提です。

動画の補足事項は「手引書 P.13〜16」を参照にしてください

初回面談に臨む際に大切な基本的なこと

  1. 相談に来てくれてありがとうとの歓迎の気持ちを相談者に伝える
  2. 気持ちを静かに整え、相談室のドアを開ける
  3. 名前で語りかける
  4. 面談時間を最初に設定しておく
  5. 守秘義務があることを伝える
  6. 質問に対して「言いたくなければ、言わなくてもいいですよ」を伝え、安心してもらう

各自治体の状況に合わせて柔軟に対応しましょう

初回面談を行なう場所は自治体によって異なります。役所内の生活保護課や生活支援課の窓口であったり、相談室が役所内に別室で準備されていたり、役所外の支援事業所であったりします。それぞれの状況によって、相談者の迎え方に違いがあることは前提です。例えば、自治体によっては、お茶は出さない、相談員の名刺は渡さないなどのルールがある場合もあります。

相談時間の受けとめ方

相談に来る人は相談室につながるまでに様々に悩み、逡巡し、困り果て、何とか勇気を奮い起こして相談に来られています。初めて会って言葉を交わす初回面談は、迷いながら相談に来た人にとっては相談員の第一印象が強烈で、その後の信頼関係をつくる上で大きく影響します。

相談しようと思ってきた人は面談冒頭の10分間くらいで、自分にとって大切なことを話される傾向にありますから、相談開始直後から10分間くらいはとにかく相談者の全てを理解したいという気持ちで意識を集中し、口を挟まずに話を聴きましょう。

また、これまでの経験からは、面談時間は最大で1時間半を超えると相談者の疲れが目に見えて深まっていきます。相談員の集中力も途切れがちになります。2時間を超えると終わったときには疲れ果てています。したがって面談時間は最初から1時間から1時間半程度と示して、その時間を有効に使うことを相談者と共有しておきます。

主訴はどのように確認したらよいでしょう?

相談者に話をしてもらうことの意味

相談者は話していくうちに自分が本当は何に困っているのか、どうしたいのかなど段々と自己理解が深まり、自分に気付く傾向にあります。相談することによって認識が深まっていきますので、話しているうちに違う課題が出てくることも少なくありません。困りごとは時間の経過とともに変化することもあります。家計改善支援員の目線でその困りごとの背景を掴みましょう。

相談時家計表の作成〜家計収入と食費以外の支出の聞き取り〜

映像視聴の前に

家計改善支援事業では家計収支の把握は必ず必要ですが、皆さんは家計収支の把握はどのようなやり方で進めていますか?次の支援の仕方で進めている人は、映像を見てちがいを意識してください。

  • 相談者に家計簿をつけて持ってくるようにすすめている
  • レシートを持って来てもらい、それを家計表に書き写している
  • その他どのようにしているか振り返ってみてください

 

動画の補足事項は「手引書 P.17〜22」を参照にしてください

相談時家計表の作成に入る前に

本教材では、主訴の確認から、いきなり相談時家計表の作成となっていますが、実際の相談現場では、相談者の困りごとについて、その気持ちや困窮の背景をもう少し長くお聴きした上で、相談時家計表の作成に入ります。

正確な計算よりも大切なこと

相談時家計表の作成は1円単位まで正確に把握する必要はありません。生活に困窮して相談にお見えになる人は、今日明日の支払いに困り、今幾らお金が不足しているかは分かっていても、1週間後どうなっているのか、1ヶ月での収支では幾ら不足するのかが分からない人がほとんどです。ですから、今の生活の仕方で1ヶ月を過ごした時にはどれくらいのお金が不足するのか、その収支をざっくりと把握し、不足する金額をどう賄うのかを相談するのが家計改善支援です。その場合、精度の高い収支結果が分かる必要はなく、大まかに収支金額を把握できれば充分です。支出を減らす方向で改善できるところはどこか、収入を増やす方向でできることは何か等を見極める上でも、改善すべき金額の目標が分からないと相談が深まりません。レシートなどを細かく積み上げて家計を把握しようとすると、収支結果が分かるまでの1ヶ月の時間を無為に過ごすことになります。相談者が少しでも早く、目標を定めて手を打てるように促していくことは大事なことですので、精度にこだわらずに、今分かることで相談を進めましょう。

「収入」と「家計収入」の違い

年金や資産や就労による収入をそのまま反映するのではなく、家計に入るお金のことを家計収入と呼んでいます。例えば、同居の子どもがいてその子の就労収入は10万円であるが、家計に5万円を入れている場合は5万円がその子からの家計収入となります。

このように収入と家計収入を区別しているのは、一緒に生計をたてている家族でも長年の家族関係や習慣により、家計への負担の仕方には違いがあるためです。

家計を丁寧に聴き取ることの意味

家計への負担の仕方の中に家族間の無理解や軋轢(あつれき)、解決すべき課題が隠れていたりするため、家計は誰が管理しているのか、家計は誰がいくら負担しているのか、そもそもの収入金額は分かっているかなどを丁寧に聴きとり、その背景も理解して行くことが重要です。十数年前、この聞き取りの中から、当時余り意識されていなかったDVに気付き、その解決に向かった事例もあります。家計を丁寧に聴き取ることで、相談員だけでなく、相談者本人も認識してなかった事実に気付くケースは少なくありません。

【実務編】相談時家計表の作成で、さらに詳しく学ぶことができます

食費以外の支出の聞き取り

まずは食費以外から尋ねてみましょう

食材は頻繁に買い物に行きますので、支出金額をインタビューで把握するのは難しい点があります。しかし、住居費は毎月決まっていますし、水道光熱費や教育費などは夏と冬などの季節による変化はあっても毎月大きな変化がないので、大雑把に把握しやすい支出です。様々なお話をする上でも、答えやすいところから入ると後が進めやすいです。

大切なのは、家計改善支援員自身の「暮らしの物差し」

住居費は持ち家なのか、賃貸なのかで、聞く内容が変わります。持家でもマンションであれば管理費のこと、賃貸であれば更新費はあるのか、また町内会費があるかなど、生活に即して尋ねましょう。抜け落ちやすいものとして、趣味や娯楽費、ペットの費用や交際費があります。家計を預かっている人のお小遣いなどは家計と区別がなくなっていて、ほとんど分からない状態の人が多いです。家計改善支援員自身が自分の生活と家計を物差しにして、相談者の生活に関心をもって、聞き取るようにしましょう。

支出金額の背景を読み取りましょう

聞き取りは、支出金額を聞いたら終わりではありません。支出金額の背景に相談者のどのような気持ちや生活、環境があるのかを意識するようにしてください。そこを解決しないと家計の改善にはつながりません。この事例では電気代や理美容雑貨費から息子さんの状態が見えてきました。私たちの経験では携帯代の聞き取りから孤独な相談者の状態が見えてきたこともあるし、教育費のかけかたに離婚したことで子どもに負い目を感じている母親の姿を見たことなどもあります。

支出費目は柔軟に

家計表の費目は生活するうえで一般的で事例の多い支出項目を挙げています。見落としや聞き漏れがないように相談者にも家計表を見てもらいながらすすめると支出費目を把握しやすいです。相談者固有の費目があれば、空いている欄や使っていない費目を書き換えて、そこに書き込みます。

家計改善支援員から費目が多いという意見を聞くことがありますが、家計改善支援を利用し、のちに相談支援員になった人からは「こんなに細かく聞かれるのかと最初は思ったが、一緒に費目をみているうちに触発されていろいろと思い出し、自分の支出傾向も見えるようになった」「預貯金等の計画が出来て将来不安がなくなってきた」という感想が出されています。

相談時家計表の作成~把握が難しい食費の聞き取り~

食費の聞き取り

動画の補足事項は「手引書 P.23〜28」を参照にしてください

生活は、食費から見えてくる

食費の聞き取りは丁寧にすすめることが重要です。食費を聞くことでどのような生活をされているのかが良く分かります。外食や弁当中心の生活であると支出が多くなるばかりでなく、健康にも影響します。何故その様な食生活になっているのかを注意深く聴いていくと、視力が落ちて良く見えない、体調が悪い、料理をしたことがないなどの別の課題が見えることもあります。また、家族数に比べ食費が少ないので、よく聴いてみると実家の親や兄弟から米や野菜を貰っていることが分かり、必要な時には相談にのってもらえる関係であることなども分かります。

相談時家計表を完成させる

個人情報に関する同意書を取る際に

個人情報に関する同意書について、自立相談支援の相談受付・申込票(A票)は家計改善支援と共通のものです。自立相談支援事業所からの家計改善支援事業所に相談者が紹介されてきた場合は相談受付・申込票(A票)の同意書が活用できます。たまに自立相談支援事業所が相談受付・申込票(A票)の同意書を相談者から貰ってないことがあります。その場合は家計改善支援事業所で同意書へのサインをもらってください。なお、家計改善支援事業所はもう一つ別に相談受付・申込票(B票)を作成する必要があります。

初回面談の振り返り

ふり返りを忘れずに

面談が終わったら、必ず振り返りをしてください。家計改善支援員の面談スキルを上げていく上で、振り返って意識することは、とても大切です。以下は、特に振り返ってほしい項目3点です。

  1. 相談者がどのような表情で帰られたか
    その日の面談が相談者の気持ちに寄り添ってスムースにすすんだかどうかが分かります。
  2. 次の相談につなげることができたか
    次の面談は何時になったのか、支援が継続していくかどうか、ゆるやかな目標が立っているか。
  3. 次の面談に向けて何を準備すればよいのか
    次の面談に向けて準備しておくことを忘れないように記録しておきます。

家計改善支援の記録を作成しましょう

家計収支が全く分からないことが分かることも重要です。その時点での家計の状態がどうであったかは、数ヶ月後に振り返る時の役に立ちます。家計改善支援事業を実施していながら自立相談の記録のみで、家計改善支援の記録を作成していない事業所がかなりあります。家計改善支援も独自の視点から留意点をまとめておくことが必要です。特に相談時家計表などは必ず、当日中に作成するようにしていきましょう。

番外編

家計表を作成したところ黒字になった場合

動画の補足事項は「手引書 P.29〜30」を参照にしてください

家計計画表の作成

映像視聴の前に

初回面談で確認したように2回目の面談は、次男の状況や意思を確認するために自宅を訪問し、家計計画表を作るという場面です。

動画の補足事項は「手引書 P.31〜34」を参照にしてください

ひとりで訪問することは可能な限り避けましょう

この映像の中では、自立相談支援員は自宅への訪問に同行していませんが、実際の自宅訪問の場合は家計改善支援員に自立相談支援員が同行しています。その方が、情報共有がしやすいためです。自立相談支援員の体制が無い場合などはケースバイケースですが、家計改善支援員が一人だけで訪問することは可能な限り避けるようにしています。双方の安全の確保やさまざまな状況に対応する上でも、複数人で対応した方がよいでしょう。

連携に必要なのは、日頃からの働きかけ

家計改善支援員が意識しておくべき連携先として別紙の事業所があります。各事業所の窓口に顔を出し、何かの時には協力をお願いしたり、窓口から相談者を紹介してもらうことも含め働きかけをしましょう。窓口によっては、新たな相談につながることもあります。

【実務編】家計計画表の作成で、さらに詳しく学ぶことができます

ライフイベント表・キャッシュフロー表・家計再生プランの作成

映像視聴の前に

自宅訪問で家計計画表が作成でき、6月に次男も勤め先が決まり、7月から仕事に就くことができました。ここからは給与支給日までの家計の状態を把握するために再度相談室に来ていただき、キャッシュフロー表などの作成をした場面です。

動画の補足事項は「手引書 P.35〜38」を参照にしてください

キャッシュフローを作成する前に必要な「ライフイベント表」

キャッシュフロー表の作成に必要な「収支に関する人生の出来事(ライフイベント)とその時期・金額」をまとめたもののことをライフイベント表と言います。相談者の思いが反映されますので、キャッシュフローを作成する前に必ずライフイベント表相談者本人に書いてもらい、意見交換してください。事例の内容を反映したライフイベント表とキャッシュフロー表を確認してください。

相談者主体の家計再生プラン(家計支援計画)

家計再生プランは、アセスメント結果に基づき、目標や解決すべき課題を整理し、今後の取り組みをプランにまとめたものです。少しずつ確実に前に進めていく言ことを念頭に置きながら、家計改善支援員が相談者と相談した内容をまとめて作成します。

【実務編】ライフイベント表・キャッシュフロー表の作成で、さらに詳しく学ぶことができます

家計改善支援のまとめ

事例のふり返りと同行支援のまとめ

動画の補足事項は「手引書 P.39〜42」を参照にしてください

個計から家計へ。家族と共に考える。

本教材の事例では、相談時家計表を作成した結果、現状の生活では5万円の赤字となることが分かりました。また、過去の病気のため本人の就労は難しいことから、支出を減らす方法の他に、次男の就労を相談しました。自宅訪問では、相談者と次男が大切にしている事を確かめながら、相談者にはどの費目を削減できるか、また、次男には短時間での就労の可能性など、家計を成り立たせる方策を一緒に考えました。

その結果、次男の就労収入5万円での収入増の他、インターネットや墓参りの費用などを減額すると、小遣い等を増額しても家計が成立しました。今後、医療費が嵩む傾向にあり、本人の障害者手帳取得のため病院に同行予定です。現在、無事に次男の就労に成功するなど、積極的に生活再生に努めています。

家計改善支援の2つの効果

本事例での家計改善支援は2つの効果が生まれました。

1つめは生活の実態が見えたことで、自分たちで改めるべき点を見出すことができた点。

2つめは次男の就労により家計改善の目処が見え、精神的な負担が軽減され、滞納生活費や固定資産税の支払いも計画的になったことで、不安が解消した点です。また、障害者手帳の取得で医療費の削減ができれば、さらに生活は安定します。

同行支援とまとめ

伴走者として支える「同行支援」

同行支援も重要な家計改善支援員の業務です。生活に困窮している人にとって弁護士や行政窓口に行くことはとてもハードルが高いばかりでなく、法的に活用可能な救済制度を知らない事も多いのです。したがって、行政窓口や法律相談に同行し、制度を活用して解決するための方策を一緒に相談します。滞納などであっても、見通しをつけるまで数ヶ月支払いを待ってもらうことや、分割納付の金額などの相談を行います。

相談の一つ一つは小さな出来事ですが、目の前にあることを一つずつクリアすることは信頼関係の積み重ねになり、やがて大きな問題を解決していく事となります。

行政直営か委託かによる違い

H30年4月時点の全国の事業所のうち、自立支援事業が行政直営のところは全体の35%です。直営+委託のところを入れても45%です。55%は委託事業所です。家計改善支援事業になると85%が委託事業所で取り組まれています。

直営で困窮者自立支援事業がすすめられている自治体の場合は個人情報の同意書があれば、庁内連携で進めやすくなります。しかし、委託になると同意書があっても難しい問題があります。委託事業所の場合は庁内への窓口同行などの取り組み方については、事前に委託元の自治体の責任者と丁寧に相談しておく必要があります。

行政窓口に同行支援することの意味

家計改善支援では行政窓口に同行支援することをすすめています。同行することによって窓口の担当者に相談者の家計状況を正確に理解いただけますし、実施可能な返済の仕方を相談者を含めて決めることが出来ます。相談者も安心して窓口との相談に臨めるため結果として約束もきちんと守られます。しかし、滞納を一括管理して対応する収納課などがある自治体では、委託先の家計改善支援員が窓口に同行すること自体を拒否されることがあります。

その様な自治体には困窮者支援の役割や、自治体にとっての家計改善支援のメリットを丁寧に話し込み、収納課の担当者の理解を深めてもらう取り組みから開始しましょう。また、家計改善支援員が収納課の役割や権限を踏み越えて一方的に対応していないか等も振り返ってみましょう。その上で、生活困窮者自立支援を実施をしている行政の責任者にも庁内の状況を理解してもらい、庁内での連携のあり方を一緒に考えてもらい、支援会議などの発足につなげるようにしましょう。

法テラスや弁護士・司法書士相談への同行について

家計改善支援員自身の勉強にもなりますから、法テラスや弁護士事務所等にも相談者に同行しますが、相談者を差し置いて家計改善支援員が先行して、話をすすめるようなことにならないよう、配慮しましょう。

最後に..

家計改善支援員は家計に現れる収支を評価するのではなく、裏側にある相談者の思いを聞き取り、生き方や人生観を尊重することがとても大切です。家計改善支援の最大の特長は、お金の動きを見る事で、家庭内で大切にしている事がわかり、同時に課題や解決策も見えてくることです。

家計改善支援は決して指導をすることではありません。

相談者が自己洞察を深め、課題を見出し、家計改善に向けて自己管理できるように立ち上がっていくための支援であることを意識し続けることが大切です。

※手引き書P44〜45と同じ(抜粋)です